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世界中で似たような料理が存在するオムレツ。その発祥をたどると、他の洋食に見られるように今ひとつはっきりしない。古代ローマの人々にオウア・メリータと呼ばれた卵と蜂蜜を混ぜて焼いた料理が起源だとする説は、現在のイタリア料理に見る「フリッタータ(イタリアのオムレツ)」に匹敵するし、フランス語の男性「homme」とすばしっこい「leste」が合わさって「オムレット Omelette」という名前が生まれたという、それらしい説もある。
「オムレツがフランス料理のベーシックであること、オムレツという言葉自体がフランス語で、なおかつ語源がはっきりしていることから、オムレツ発祥の地がフランスだということは、ほぼ間違いないでしょう」と話すのは、パリ在住で元料理ジャーナリストだった高木朝美さん。フランスの辞書「ロベール言語辞典」(LE
ROBERT, DICTIONNAIRE DE LA LANGUE FRANCAISE)によると、オムレツという言葉が生まれたのは1548年。語源はLAMELLE(ラメル=薄片 薄切のハムのような薄く平たいものを表す言葉)で、当時オムレツは平たい形をしていたことを表している。
今に残る言葉はラメルだが、言語学的には当時この言葉は存在せず、オムレツの直接の語源は、現在は存在しないALUMELLEという言葉。「これがALUMELLE
→ALUMETTE→AMELETTE→OMELETTEのように変形してオムレツになったんですね」と高木さん。
もうひとつ彼女から貴重な情報が届いた。フランスの権威ある料理の本「ラルース・ガストロノミー辞典」(LAROUSSE GASTRONOMIQUE)にはオムレツ・ナチュール(卵だけのシンプルオムレツ)をはじめ、普通のオムレツ(オムレツ形)、オムレツ・プラット(イタリアやスペイン風の平たいオムレツ)、そしてスフレのように卵白を泡立て使うオムレツ・スフレと大きく分けて3種類38のレシピが載っているという。ちなみに同辞典による、正当なオムレツのレシピは次の通り。
(何人前という明記はないが)卵8個をといて精製塩をふり、胡椒をふるなら、粒胡椒をひいて使う。熱したフライパン(テフロン加工が望ましい)に25〜30gのバターを溶かして卵を流し入れてフォークで混ぜる。卵がかたまりはじめたら卵の端をフライパンの中心に寄せるようにしてまとめる。できあがったらあらかじめ暖めた皿に盛り、照りをつけるためにバターをひとかけ乗せる。卵の中にミルクを大さじ2〜3杯、または生クリームを大さじ1杯混ぜてもよい。 |
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「オムレツはモン・サン・ミッシェルの名物なんです」と高木さん。モン・サン・ミッシェルはノルマンディーとブルターニュの境目にある世界遺産である。「ラルース・ガストロノミー辞典」によると、いちばん美味しいオムレツは最良の卵と上質のノルマンディー産バターを使った「メ−ル・プラール MERE
POULARD」のものと書いてあるそうだ。メール・プラール(プラール母さんの意味)はモン・サン・ミッシェルにあるホテル・レストランの名で、同時にお菓子、卵、カルバドスなどを生産・販売するブランドでもある。生みの親はアネット・プラールという料理人で、彼女が1888年に同時にオーベルジュ(宿屋)を開いたのが、もとになっているとのこと。オムレツという料理が16世紀から存在しているという事実がある以上(辞典にはオムレツは中世にはすでにポピュラーだった、とある)、モン・サン・ミッシェルがオムレツ発祥の地というのは難しいが名物だとする話は正しいようだ。 |
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「ノルマンディーと言えば、オムレツの味の決め手となる卵とバターが美味しい土地柄。発祥の地とまでいかなくても、中世でもノルマンディーでオムレツが作られ、それがとても美味しかったということは充分想像できますね」と高木さん。
ちなみに筆者はパリの高木邸を訪ねると、何をおいても「有塩バターで作る地鶏の目玉焼き」を真っ先にリクエストする。バターの香りを嗅ぎながら、真っ黄色で味の濃い卵の美味しさに出会うと「パリの空との再会」をイメージするのである。 |
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