ニッポンの洋食新発見。
第一回テーマ とんかつ
とんかつのルーツ  
   
日本人が地球上に存在する限り、「とんかつ」はなくならない。食文化史研究家岡田哲先生
食文化史研究家 岡田哲先生
先生もブルドックソースのファン。「舌が味を覚えているので変えられない」とのこと。
「21世紀はモノ(物質)よりも、ココロ(精神)を大切にする時代へと、価値観が大きく変わろうとしています。明治維新により肉食が解禁になり、洋食を誕生させた先人たちの情熱と心意気を、今一度、謙虚に思い返してみたかったのです」。 『とんかつの誕生』〜明治洋食事始め〜(講談社選書メチエ)の著者である岡田哲先生が、この本を書かれたきっかけである。本をめくると、とんかつだけでなく、牛鍋(後のスキヤキ)やあんパンなど、今や「ニッポン食」と呼ばれるものがたくさん登場する。 初めて知ることばかりなのに、何故か懐かしさを感じる本とはこのことだろう。私たちが日本人であることを、誇りに感じる一冊である。この本を「日本の洋食史」ととらえ、教科書としている大学もあるそうだ。

さて、明治5年の肉食解禁から60年かかった「とんかつ」の誕生について、岡田先生は「日本人ならではの感性が生んだもの」と話される。「とんかつ」ができる前は、肉を少しの油で焼いたり、炒めたりすることが主流だった。しかし、これだと一度に少ししか調理できない。パン粉をきせて油で揚げてみたら、意外にも早く、しかも一度にたくさん調理でき、さらに美味しかった…これが「ポークカツレツ」、後の「とんかつ」誕生秘話である。日本には、天ぷらを上手に揚げる技術や、蕎麦を上手に茹でる技術があり、欧米人には真似のできない、その独特の調理技術が「とんかつ」を生み出した。

食文化史研究家、岡田哲先生 厚い豚肉は、しっかり火を通すため、二度揚げ三度揚げをする。その揚げ方のコツにより、香ばしい「とんかつ」になる。この時間をかけて揚げることも、「とんかつ」を美味しくしている。「少々待たされるお店の方が期待できるんです」と岡田先生。とんかつの名店を探す、ひとつの秘訣になりそうだ。生キャベツ・ウスターソース(トンカツソース)・からし・豚汁(しじみ汁)、どれも「とんかつ」には欠かせないパートナーである。もちろん、ご飯と箸も必須である。

とんかつは、上野や浅草が発祥の地と言われる。 とんかつは、庶民のごちそうだったのである。豊かになった現在、ごちそうに「とんかつ」を取り上げる人は少ないかも知れないが、立派なニッポンの国民食である。先人の知恵が生んだとんかつを、「日本人が地球上に存在する限り、なくなることはないでしょう」と締めくくられた岡田先生の言葉がとても印象的だった。
「とんかつの誕生」〜明治洋食事始め〜
著者:岡田 哲 講談社選書メチエ
定価:本体1,500円(税別)
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第一回 とんかつ
第二回 ハンバーグ
第三回 オムレツ
第四回シチュー
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